tanka yomou
1夏は澄みトレリスのない日々は過ぎ くせ毛を掻いてどこかへ消える
2どこまでも届く気がした公園の水飲み場から虹がかかって
3多機能な言葉をいくつ覚えても差し込み口がわからないので
4これからどうみればいいかわからない 僕には今と夢しかなかった
5気だるさが纏わりついた曇り空 視界を散らす溺れるように
6楽園を探し求めて旅立った安住の地が天国だった
7葉もれ日とふやけた緑沈みゆくきらきらひかる空の海面
8干涸びた懐かしさには水をやり枯れてゆくのをただ待つばかり
9秋が来てすずしくなったと喜んで 別れがつらいと言わねばらない
10無意識にキャップをはずし水を飲むそういうふうに生かされている
11結婚を前提にしてこれから○×ゲームをしてみませんか?
12まだ星がまぶしかったころ輝きは瞳の奥に瞬いていた
13枝垂れた言葉が肩によりかかりぬるい重さに依存している
14まろやかなその手の熱が僕を灼く見えないけれど消えない痕が
15火の玉が僕らの想いと重なっていずれ落ちると思ってしまう
16機械的じゃない僕らの愛や恋は 名もなき心見えないフォルダ
17それがもし愛ならいっそ消えないで 胸に抱えて破り捨てたい
18愛という抜け殻だけをおきざりに スイッチされたおざなりな秋
19バランスを維持するために傾いて気づけば君によりかかったり
20死にたいと社交辞令で言っておく必要な嘘優しさはなく
21高架下の落書きみたいな感情が青春みたいにむせ返ってる
22ももいろが花瓶に咲いて春めいた私の頬も染まるくらいに
23ドーナツは純粋な穴?孤独には中心のない穴があいてる
24僕たちは電子的に愛し合う電気信号焼け落ちるまで
25反射した光の迷路で僕たちは約束という太陽をさがす
26スキキライ偶然落ちた花びらで嫌いになって好きだと知った
27生活が漂う前の夕方にひとつの影は君とあるいた
28愛すると決めることを迫られる 道に落ちてる空き缶をみて
29空色のピース散り敷くこの街で隣り合うべき青を探した
30あの頃の傘は色落ちて透明 見える世界はくもってばかり
31水面に浮かぶ言葉は瞬いてきらきらひかるきらきらきえる
32さようならマジックカットな僕たちはハサミじゃないとしっかり切れない
33ぷつぷつと受信している雨の音つたない声が静かにつつむ
34揺れているペットボトルの水面が前触れのない心みたいに
35秋風がくすぐったくて淋しいと言ってみただけ、なんにもないよ
36とりあえずそこにあるので抱いてみた、さびしさとかいう感情らしい
37理由などなくても恋をするくせに盛大にやるお別れパーティ
38いたずらはできないけれど仮装する何も持たない亡霊なので
39水彩の夢は朝日に色褪せて乾いためじり黄ばんだこころ
40ネオテーム アドバンテーム サッカリン みたいな感じで 愛を囁く
41夕方の香る静けさ君思う金属バット淡い喧騒
42青い鳥飛び交う空のタイムライン月も見ないで溶けてく時間
43みたいなハレー彗星君と見た流れ星はくずかご行き
44カーテンへもれる光がまろやかに君の肢体を愛撫している
45砂浜の裾を掴んでみたかったつたない思いらくがきみたい
46あなたとの通信料はペタバイト解約金は発生しない
47太陽が君のことだけ映えさせるFF内で限定公開
48地獄にもみんなで渡れば怖くない温水プールで心中しよう
49お風呂場で浮かぶ短歌はふやけて ボケてるみたい上るとはじける
50あの星、と、さした指先くらいの穴を真夜中じみた心にもくれ